『受難』

『受難』

フランスの作家・批評家アンドレ・シュアレス(1868-1948)の散文詩に、ルオーが17点の挿絵を添えた銅版画集。作品はキリスト受難の物語を元にしながらも、独自の感性によって構成されています。キリストの苦悩の表情、街中に佇むキリストの姿、荷物を担ぐ職人や農夫、漁師の姿などが、黒い印象的な輪郭線の表現で描き出されています。

敬虔なカトリック信者として知られるシュアレスの元へルオーが最初の手紙を送ったのは、1911年のことでした。その後、30年あまりにわたって二人の親密な交流が続きます。生活の困窮と制作上の苦悩をかかえるルオーを、シュアレスは常に励まし、物心両面から暖かく支えました。画商のアンブロワーズ・ヴォラールが版元となり、ルオーはシュアレスの協力を得て1927年に『受難』の構想に着手します。しかし、実現までには長い年月を必要としました。作品が世に出されたのは、着手から12年後の1939年のことです。

『受難』より12点


  扉絵:市門に立つキリスト

  渡り職人

  キリストと聖女

  キリストと貧者たち

  この人を見よ

  この苦しむ人を見よ

  (横顔の)キリスト

  漁夫

  羽飾りをつけた婦人

出会い

  キリストと弟子たち

  処刑を手伝う男(十字架の木材を運ぶ)